新規に会社を設立するメリットのひとつに免税事業者になるということがあります。では免税事業者とは、免税事業者になる条件とは何でしょう。
ここでは免税事業者について詳しく解説しています。
1. 免税事業者とは
免税事業者とは、消費税の納税義務がない事業者のことです。対して、納税義務がある事業者は課税事業者と呼びます。
免税事業者となることができるのは売り上げが比較的小さい事業者です。
つまりそのような規模の小さい事業者については、納税すべき消費税額の計算の煩雑さを考慮して、納税義務を免除しているというわけです。
ちなみに、消費税の納税義務が免除されているため、免税事業者は消費税の還付を受けることはできません。
2. 免税事業者の条件
以下の全ての条件に当てはまれば免税事業者になります。
- その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である
- 特定期間における課税売上高が1,000万円以下である
- その事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以下である
- 特定新規設立法人に該当しない
以下、それぞれの条件について詳しく解説します。
⑴ その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である
基準期間における課税売上高とは、法人の場合は前々事業年度、個人事業者の場合は前々年の課税売上高のことを指します。
課税売上高とは、「輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)」のことです。
【基準期間】
具体的な例を挙げてみましょう。例えばA社の売り上げが次の通りだとします。
令和元年度 課税売上高600万円
令和2年度 課税売上高1,200万円
A社の令和3年年度と令和4年度の消費税納税義務については次のようになります。
令和3年度 消費税納税義務:なし(令和元年度の課税売上高を参照)
令和4年度 消費税納税義務:あり(令和2年度の課税売上高を参照)
このように前事業年度ではなく、さらに一期前のものを参照して消費税納税義務の有無が決まります。
1期目が1年未満の場合
二期前の課税売上高を参照するということでしたが、三期目の法人で、基準期間にあたる一期目が1年未満であることは往々にしてあります。そのような場合は、一期目の課税売上高を1年ベースにして考え直します。
次の例で考えてみましょう。3月決算で9月13日設立の法人Bがあったとします。一期目の課税売上高は630万円でした。これを1年ベースで考えた時に、課税売上高はいくらになるのでしょうか。
まず、一期目は何カ月事業を行っていたかを計算します。1カ月未満の日数はすべて繰り上げてひと月と考えて、9月から3月で7カ月です。7カ月で630万円、つまりひと月あたり90万円の課税売上高があったと考えられます。これを12倍して、1年あたり1080万円となりますから、法人Bの一期目の課税売上高は1080万円で、三期目は課税事業者となり消費税納税の義務が課せられることになります。
このように、基準期間が1年未満である場合は、その期間の課税売上高を1年ベースに直して計算をする必要があります。
⑵ 特定期間における課税売上高が1,000万円以下である
基準期間における課税売上高が1,000万円以下であったとしても、特定期間の課税売上高はどうですか?
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えてしまうと免税事業者にはなれません。
では、特定期間とはどの機関を指すのでしょうか。
特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。
【特定期間】
⑶ その事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以下である
そもそも資本金が1,000万円以下でないと免税事業者にはなれません。
⑷ 特定新規設立法人に該当しない
普通に中小法人を設立するのであれば問題にならないのですが、特定新規設立法人に該当する場合は免税事業者にはなれません。
【特定新規設立法人とは】
その事業年度の基準期間がない資本金1,000万円未満の法人(社会福祉法人を除きます。以下「新規設立法人」といいます。)のうち、その事業年度開始の日において特定要件に該当し、さらにその新規設立法人が特定要件に該当する旨の判定の基礎となった他の者および他の者と特殊な関係にある法人のうちいずれかの者の課税売上高(新規設立法人のその事業年度の基準期間に相当する期間の課税売上高)が5億円を超える法人(以下「特定新規設立法人」といいます。)については、その課税期間の納税義務は免除されません。
国税庁 ≫基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
つまり、課税売上高5億円を超えるような大企業が株式50%超を保有する場合や、その大企業を支配する個人が新会社を設立した場合は、免税事業者にはなれませんよということです。
≫特定新規設立法人の納税義務免除の特例(特殊関係法人の範囲)
3. 課税事業者を選択したほうが良い場合もある?
免税事業者は消費税の還付を受けることができません。
ですが、輸出業者などは経常的に消費税が還付になりますから、その還付を受けるために敢えて課税事業者となることを選択できます。
また、インボイス制度により免税事業者に該当する場合でも、課税事業者を選択することもあるでしょう。
そのためには消費税課税事業者選択届出書という書類を税務署長に提出する必要があります。これは適用する課税期間の開始の日の前日までに提出することが必須ですが、この届を提出した場合は、適用を開始した初年度を含む2年間は免税事業者には戻れないので注意してください。