定款は、会社の基本的ルールを定めたもので、一言で表現すれば「会社の憲法」のようなものです。会社を運営していくための重要な指針となりますので、会社を設立する前に必ず作成しなければなりません。

定款を作成するには、会社法の知識が必要です。しかし、これから会社を設立しようという人に十分な知識がある人はほとんどいません。もちろん難しい点のあるかと思いますが、ある程度定型化しているのも事実です。要点さえ押さえてしまえば会社設立も怖くありません。

1. 定款とは?

定款 電子定款

⑴ 定款の記載事項

定款は、自らが定める会社の基本的ルールですが、その内容を自由に決められるわけではありません。
定款に記載する内容は、法律上の区分けで見ると「絶対的記載事情」「相対的記載事情」「任意的記載事情」の3つになります。会社法によって一定の基準が設けられているため、これに準じていない定款は、認証を受けられませんから注意しましょう。

①絶対的記載事項(定款に必ず記載しなければならない事項)

・目的 

「営利事業であること」「違法な事業でないこと」「事業内容が何かが客観的で、正確に確定できる程度に明確・具体的であること」が要求されます。
これから行う予定の事業に加え、将来行う予定の事業も明記することができる。絶対的記載事項である事業目的を変更、追加する場合は、変更登記が必要になるので、変更予定のある事業内容をあらかじめ記載しておくことによって、変更登記の際かかる登録免許税を節約することができる。

・商号 

会社名を明記します。使える文字:漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字(0, 1, 2, 3, 4, 5……)、使える記号:「&」(アンパサンド)「’」(アポストロフィー)「,」(コンマ)「‐ 」(ハイフン)「.」(ピリオド)「・」(中点)
会社名には必ず前か後に「株式会社」等の会社の種類を入れなければならず「Co.,Ltd.」や「LLC」等会社の種類を英語で表記することはできません。同一の住所で同一の会社名は認められないので、シェアオフィス等で登記する場合は確認が必要です。

・本店の所在地 

本店の所在地を記載します。。最小行政区画である市町村(東京都の特別区を含み、政令指定都市にあっては市)を表示すれば足り〇丁目〇番地まで表示する必要はありません。
本店の住所を変更する場合、定款変更が必要なため、株式会社なら株主総会を開催して決議を経ないといけない等の手間がかかります。市区町村までの記載とすることによって、こういった手間が省けます。
※同じ市区町村内で住所移転した場合でも、住所の変更登記は必要になります。

・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 

会社設立後の資本金に相当する額になります。約束した出資を履行しない者が出る場合などに備えて、「○○万円以上」と最低額の記載にしておくこともできます。

・発起人の氏名または名称および住所 

発起人に関する氏名や住所(住民票通りに)を記載します。

・発行可能株式総数 

特に制限があるわけではありませんが、会社が発行することができる株式の総数を明記します。

②相対的記載事項(定款に定めないと効力が生じない事項)

・現物出資 

現物出資する財産と、その価額と出資した人の氏名を記載します。

・財産引受 

発起人が会社のために、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約をいいます。目的となる財産、その価額、譲渡人の氏名・名称を記載します。

・発起人の報酬・特別利益

発起人が会社設立にあたって、実施した労務に対する報酬などについて定めます。

・設立費用 

定款の認証手数料・印紙税、設立登記のための登録免許税など、定款の記載がなくても当然に成立後の会社の負担とされているものを除き、発起人は、定款に記載した金額の限度で設立後の会社に請求できます。

③任意的記載事項

・定時株主総会の招集時期 

決算から一定時期のうちに定時株主総会を開く必要があり、その時期を記載します。

・取締役など役員の数 

取締役会を設定している場合は、取締役3人以上について記載します。取締役会を設置していない場合は、1人以上の取締役について記載します。氏名は必要ありません。

・事業年度 

事業年度の期間について記載します。

定款には、用紙やフォーマットなどに決まりはありませんが、A4縦で横書き、文字色は黒のみとなります。また、末尾に発起人全員の氏名を書いた上で捺印するなど、いろいろな決まりがあります。手書きで作ってもいいですが、鉛筆は不可です。
PDFファイルによる電子定款を作成すると4万円の印紙税が節約できます。ですが、認証を受けるためには、有料版のPDF作成ソフトやICカードリーダライタなどの機器が必要となりますので、最初からソフトウェアや必要機器を持っていない限り、代行業者に依頼することになります。

⑵ 定款の構成

定款の構成は、取締役会や監査役を設置しない最もシンプルなものでは、総則、株式、株主総会、取締役、計算、附則の全6章になります。決定した基本事項を定款の構成に則して作成します。各章の内容を確認していきましょう。

・第1章 総則  会社の基本情報を記載。総則をチェックすれば「どんな会社か」が分かるような内容にします。

・第2章 株式  発行可能株数や譲渡制限など、株式に関する取り決めを記載します。

・第3章 株主総会  招集の方法や決議、議事録など、株主総会の規定を記載します。

・第4章 取締役及び代表取締役  取締役及び代表取締役に関する規定を記載。取締役会を設置する会社は、別章を設けて記載するケースもあります。なお、監査役や監査役会を設置する会社は、別章が追加されます。

・第5章 計算  事業年度、剰余金など、決算に関わる規定を記載します。

・第6章 附則  1~5章以外で、設立に際して取り決めた規定を記載します。

⑶ 実際の定款と記載例

2. 定款の認証

会社設立時に作成された定款のことを「原始定款」といいますが、この原始定款は、株式会社の場合、作成してそのままの状態では定款としての効力を持ちません。公証役場で公証人に正式な定款として認めてもらうことではじめて効力を持ちます。(合同会社の場合は「定款の認証」は必要ありません。)

定款認証

⑴ 定款認証に必要なステップが追加(2018年11月30日~)

公証人法施行規則の改正で定款認証に必要な書類が1枚追加されます。

定款認証を行う際には、設立予定の法人の実質的支配者を明示し、暴力団員になどに該当するかどうかを申告する必要があります。

⑵ 実質的支配者とは?

「実質的支配者」とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な個人や上場企業(その子会社を含む)のことを指します。
この「実質的支配者」は、2016年10月1日に改正された「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」により、法人口座の開設時や取引責任者の変更時において、「実質的支配者申告書」での申告が必要です。

具体的には、大株主・大口債権者・創業者等が「実質的支配者」に該当します。

以下出てくる「自然人」という単語に聞き覚えがない人も多いかと思います。自然人とは権利・義務の主体である個人という意味の法律用語です。ただし、ここでは上場企業やその子会社も自然人に含まれます。

1)議決権の直接保有及び間接保有が50%を超える自然人

該当者がいればその1人が実質的支配者です。
※ただし、事業経営を実質的に支配する意思または能力がない場合は(3)の条件で判断

2)議決権の直接保有及び間接保有が25%を超える自然人

1に該当者がおらず2に該当者がいた場合、2の該当者全員が実質的支配者になります。
※ただし、事業経営を実質的に支配する意思または能力がない場合は(3)の条件で判断

3)出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力のある自然人

1と2で該当者がいない場合や該当者に実質的に支配する意思や能力がない場合は、3の該当者すべてが実質的支配者になります。

4)代表権を持つ取締役

1~3に該当者がいない場合は代表取締役が実質的支配者になります。

5)実質的支配者は、法人の事業形態によって異なる

資本多数決法人の場合

※マネーフォワードページより引用

資本多数決法人以外の法人の場合

※マネーフォワードページより引用

⑶ 定款を認証してもらうためには

定款を認証してもらうために必要なことについて説明します。定款の認証には以下のものが必要になります。

  • 定款3通
  • 発起人の印鑑証明書(全員分)
  • 収入印紙(紙の場合):4万円分 ⇐ 電子定款の場合は不要
  • 認証手数料:3~5万円 (2022年1月に料金改定)

資本金100万円未満 → 3万円

資本金100万円以上300万円未満 → 4万円

資本金300万円以上→5万円

  • 定款の謄本交付手数料:1ページにつき250円 (2,000円前後になることが多い)
  • 委任状(代理人が定款の認証に出向く場合)

⑷ なぜ電子定款にするのか

なぜ電子定款にするのか?

それは認証を受ける時に電子定款なら0円なのに、紙の定款には4万円の収入印紙を貼付しなければならないからです。

紙で提出するか、データで提出するかで4万円も違うなんておかしな話ですが、経費を削減できるなら、それに越したことはないですね。

しかし、電子定款は、ただ定款をPDF化してデータ化すればよいのではなく、電子定款に電子署名を付さなければなりません。

電子署名を付するためのシステムを構築する為に、3~4万くらい必要な上に、余計な時間もかかってしまいますので、専門家にお任せするのがおすすめです。